深夜の徘徊者、振り返る

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2020年1月19~26日まで新宿三丁目BAR KingBiscuitで写真展「Night Crawler」を開いた。同時開催で石本一人旅「グッドバイ」。石本とは5年前にもこのBARで写真展を開いている。

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まずこの「Night Crawler」という展示のタイトルとテーマについて。

今回の写真はすべて深夜に撮ったものだ。深夜の街を歩き、撮り、寒さにへこたれながらも撮ったものだ。

深夜の街を撮った写真はそう珍しくない。ブラッサイは1930年代の夜のパリを撮っていた。普遍的なモチーフと言ってもいい。ではなぜそのテーマを選んだのか。

一つの理由は単純に私が昔から夜が好きなことがある。中学生の頃からよふかしが大好きだった。群馬の田舎に生まれ育った私には残念ながら夜の街に繰り出すという選択肢はなかったが、何もない深夜の田舎道を歩いたり深夜ラジオを毎晩のように聞いたりするのは特別な時間だった。昼間冴えない日を送っていても、謎の万能感があった。

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もう一つの理由は夜の街にいる人達が好きということだ。

使い古された言葉かもしれないけど、夜の街にいる人はどこか寂しげな人が多い。大勢の仲間と遊んでいるのならともかく、一人で街を歩いている人はなぜそこにいるのか。二人で身を寄せ合っている人はなぜ温かい室内にいないのか。

夜は暗くて優しくて包んでくれるからだと思っている。刺すようなLED光源や店の看板がどんなに光っていても、何も隠せない昼の光と違って必ず隠れられる影がある。何をしても怒られず、どんな顔をしていても隠してくれるような錯覚を与えてくれる。そんなところに人が慰めを求めているのではないかと思う。

逃避と言えば逃避だ。だけどそんな人たちに強く共感するし、寄り添う感覚を持ちたい(いや、だからといってそんな人たちを撮ることが寄り添うことになるのかどうかはちょっとアレなんだけど)。

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そんな夜の万能感、優しさ、寂しさ。そういったものを詰め込んだのが今回の展示だった。私は弱い人の味方ではないけど理解者ではありたいと思っている。私も弱いからだ。

 

タイトルに関しては同名の映画からとった。内容は全然違うのだけどタイトルの響きがとても気に入っていて、今回の展示内容を決めたときに「これだ!」と思った。同じように漫画の「よふかしのうた」からとっても良かったなと決めて公表した後から思ったし、内容的にはこっちの方がフィットしたのだけど、まぁそれもタイミング。

 

展示期間中について

想定以上のお客様に来ていただいたこともあり、石本がバーテンダー業務を行いながら私が写真の説明や注文取り(人生初の経験である)を行ったりしていた。色々と不手際があったと思うのでお詫び申し上げたい。

やはり直接写真の感想を頂けるというのは本当に嬉しい。私自身久しぶりの展示ということもあり心から楽しんだ。ちょっと疲れが出た時もあったが、毎晩写真の話をして酒を飲むというのは至福の時であった。皆様に心からお礼を申し上げます。5年前の展示からは考えられないほどお客様が来てくれた。

 

今後は展示の予定はないが、とある写真サイトからお誘いを受けている。そこに向けて注力しつつ、また目の前にある夜の街の写真やその他の写真を撮っていく。展示がなくても写真は続く。The shoot must go on。また何らかの形で皆様に写真を見せる機会が持てることを期待してる。